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【HQ/R18】二月の恋のうた

第31章 二月の恋のうた(2)


天海の学校の最寄駅に行くために、新幹線を降りてから2回乗り換えをした。
これは、昨晩のうちにきっちり調べておいた。

だが、なぜか瀬見と白布、それぞれからルート検索の結果が送られて来た。

どちらも同じ内容を記していたのだが、瀬見は
「とにかく来たら乗れ。どの電車でもお前が行く駅には止まる」
と書いていたのに対し、白布は
「各駅停車よりは10分間隔で出ている快速や急行に乗った方が早いです。快速と急行、どちらに乗っても目的地には着きますし、到着時間も大差ありません。来た方に乗ればいいかと思います」
と、事細かく書き記していた。

2人の違いに、普段のセットアップを見るような興味深さを覚えつつ、俺はシンプルな瀬見案を採用した。

平日の昼過ぎだが、車内には学生たちがそれなりにいる。
新幹線の車中と異なる様相に、意図せず視線を走らせていたが、うち何度かこちらを伺う眼差しにぶつかった。

視線は、どれもこれも、交錯したと思った瞬間に逸らされた。
慣れた反応だ。
初めて会った時の天海の、あの、射抜くような真っ直ぐな瞳こそが特別だった。

あの時から、特別だった。

乗り過ごさないようにドア付近に立ち、目的の駅で足早に降りた。
改札はどうやら1つらしい。
出口標記に導かれ、俺は階段を登り、改札口まで行く。探すのは、華やかさと騒がしさを共存させた、佇んでいるだけで存在感のある背の高い女性――面倒見の良い天海の“先輩”。

「牛島さん!」

いきなりの呼び出しに、その場にいた誰もが声の主へと向き直る。
改札を出た直後の俺も当然に。

その女は大きく手を振って駆け寄ってきた。
彼女は誰か。
知っている、とも、知らない、とも言える。
会ったことが1度だけあった――春高で俺に声を掛けてきた天海の“後輩”だ。

「お待ちしていました!」

天海の“後輩”は唇の端に、隠しきれないのか歓喜の気配を垣間見せ、改札を出たばかりの俺の手首を掴む。
同時に「間に合って良かったです!」。

「間に合って、とは?」

やんわりと手を振り解き、怪訝そうに尋ねた。
待ち合わせなどしていないはずだが?
目で訴えてみたところ、どうやら通じたらしい。

「前の“会長”さんの彼女さんから命じられて来ました!」

形ばかりの敬礼をし、彼女は弾けるような笑みを見せた。
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