第24章 ★「さよなら」(2)
絶頂を迎えたばかりの身体は、俺を容易に受け入れた。
「あぁっ、ま、だ、あぁっ…」
何か言いたげにしながらも言い切れず、天海が部屋に甘い声を響かせる。
――この声も、好きだ。
高すぎず低すぎず。
理知的で媚びる色はなく、情事に際しては煽るように艶めく。
この声が喘ぎ、叫び、俺の名を呼ぶ…それが堪らなく好きだ。
だから…もっと鳴かせたい。
彼女の両脚を左右それぞれの肩に掛け、さらに腰を浮かせると深く交わる。
「あぁぁぁっ…!」
「…ッ、ァ…」
柔らかく迎えた彼女が俺を締め付ける。
口で扱かれた時よりも数段強い刺激。
大きく息を吐くと、埋め込んだ俺自身が硬さを主張して、また、天海が声を上げた。
心地良い嬌声に酔いながら、横を向いて彼女の足首にも舌を這わせる。
ビクッと反応するそのすべての挙動に奮える。
「…ありさ」
枕に半分顔を埋め、やや胡乱な瞳だけをこちらに、天海が応える。
「若利、くん…」
「俺が知る女はお前だけだ、ありさ」
「ぁ、んっ…」
「それはこの先も変わらない…お前以外を知ろうとは思わない」
お前だけでいい。
後にも先にも。
最後は独り言めいた声量となった言葉を落として、ゆっくり、身体を前後に揺らすように抽送を開始する。
「ぁ…あ、ぁっ…んんっ…」
枕の端を掴んでいた自らの指を口に当て、軽く歯を当てながら天海が快感を漏らす。
薄っすらと汗ばみ出した肌。
点在するキスマーク。
手を伸ばして胸を掴み、揉みしだく。
「やぁ…ん、ぁ…」
悶える様子を眺め下ろし、腰のストロークを速めて行く。
発する彼女の声、そのキーが上がり、また、テンポも上がる。
「んぁ、ぁ、や、ぁっ、あぁっ」
「ありさ…」
「あぁっ、待っ、ぁぁぁぁっ」
天海が必ずよがるその場所を比較的強く深く穿つ。
溶けた熱の淫靡な音が彼女の艶声に負けまいと空間を埋める。俺も熱と甘美な痺れを味わい続けながら腰を打ち続けた。
「あ、わかと、ぁっ、イっく…!」
「ありさ…お前、だけだッ…」
断言して、俺は楔を奥に打ち込んだ状態から腰をグラインド。
天海が高く鳴く。
「――ッ!」
近づく終わりの気配に高揚感が肉体を支配する。
同時に俺は、その“終わり”の予感を苦しく感じていた。