第24章 ★「さよなら」(2)
ズボンの上から頑なになった俺自身を彼女は手でさする。
微妙な、弱々しい部類に入る刺激…自分では決してやらない力加減。
口元を押さえたまま天井を仰ぐ――苦しい。
身体が熱く、焦れて、どうにも苦しい。
天海は俺の胸元を、丁寧に、何通りものパターンで舐めていく。
その都度、律儀と言ってもいいくらい確実に揺れて応える身体。
コントロールが効かない。
初めての経験に戸惑いつつ、身体を熱くさせる。
それを察したかのように、不意に天海は俺のズボンのベルトに手を掛け、それを器用に片手で外していった。
ホック部分も外し、ファスナーまでも完全に下までおろす。
それらはすべて片手で行われ、その彼女の手慣れた様に多少の引っ掛かりを覚えもした。
だが、深く考え込むには至らない。
彼女が口唇で与えてくる断続的な痺れがノイズのように思考を乱し、深く考え込むことを妨げる。
為されるがまま…天海に身を委ねていた俺は、彼女がいきり勃った俺のものを下着から取り出し、間髪入れずに扱き始めたところで夢から醒めたように大きくビクリと震えた。
「――クッ」
つい先ほど俺の唇に触れていた指が、硬くなった俺自身を愛おしむように撫でていく。
「天海…」
何も言わず、リップ音を立てて胸への愛撫を終わらせた彼女は、膝立ちのまま俺を見上げてくる。
「…愛させて、たくさん」
甘く優しく悲しい響きを携えた天海の言。
その余韻が完全に消え去る前に、彼女は俺の怒張したそれを咥え…口で行為を始める。
「――ッ!」
腰から背骨を通り脳まで疾る、鋭い何か。
それが快感なのだと認識する前に、荒い息が声を伴って発せられてしまう。
「…ァ、ハァ…ッ…天海ッ…」
短い周期で喘ぎ、俺は彼女の頭に触れる。
全身が粟立つような感覚が俺を襲い続ける。
それは、彼女の中に入った時に感じるのと同一の感覚――暖かく、柔らかく、包み、攻め、締め上げられる。
「ァ…天海…ッ…ありさ――ありさッ!」
震えて、天海の頭を引き剥がそうとした。
力の限り。
そうしたつもりだったが、実際にはあまり力が入っていなかったのかもしれない。
天海は、ぴちゃぴちゃと水音を立てて俺に奉仕し続ける。
俺は、昂りを必死に抑え、自我を保つ。