• テキストサイズ

【HQ/R18】二月の恋のうた

第21章 冬の稲妻(2)


「とにかく、天海を探そう」

“先輩”が、“会長”と俺、それぞれの目を見て半ば命じる。

「天海が会っていたのが誰なのかは本人から聞くのが手っ取り早い。その時に、噂のことも直接聞けばいい」
「まず二手に分かれるか」
「それがいいと思う。連絡は随時、携帯…に…」

打ち合わせの算段は始めた直後に“先輩”が黙り込む。
その不自然さに“会長”が「どうした?」と至極真っ当な問いかけを為した。

“先輩”は恋人の質問には答えず黙考。
彼女は、この周囲の気温を数度下げるかのような声音で“会長”へと逆に問い尋ねる。

「…昨日の夜、変な電話があったって言ってたよね?」
「ん? …あぁ」
「どんな電話?」
「どんなって言われても…無言電話だからな」

俺は「無言電話」という言葉に警戒心を抱く。
“先輩”が俺の変化に気づいて舌打ちした。

「…その顔は、牛島クンのところにもあったってことだよね、無言電話。いつ?」
「昨日、新幹線の車内で」
「午前中か。私のところには昼過ぎ」
「ちょっと待て。全員のところに無言電話があったってことか?」

「そう」と“先輩”が苦虫を噛み潰した顔で言う。

「アドレス帳や返信履歴から番号検索できる、掛け間違いなんてそうそうないこのご時世に。全員。同日に。無言電話を受けたわけ。…偶然の一致で話が済むと思う?」

済むはずがない。
全員が声に出さずに悟る…やはり何かが起こっていると。

何が、という部分は謎のままだ。
だがしかし、明確になっていることもある。
いま、この場に居合わせた3人の共通点――天海。

「絶対に探しだそう、天海を。こんなこと言いたくないけど…嫌な予感ってヤツがする」

双眸に意思を漲らせて“先輩”が断じる。
息苦しさを覚えずにはおれない、切迫感に、奥歯をギリと噛み締めた。

「あっ、いた! 若利くーん!」

通路の真ん中を塞いで深刻さを増していた俺たちの間を、そのあきれる程の明るい声音が突き抜けていった。

振り向くと、天童、大平、瀬見が揃ってこちらへやってくるところだ。

「なに、ありさちゃんどうしたの?」

変な形で席を立ったから3人とも気になっていたのだろう。
俺はどう返したらいいか迷う。

一から説明した方がいいのだが…まずは「手伝って欲しい」と、重要なことのみを最初に伝えた。
/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp