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【HQ/R18】二月の恋のうた

第21章 冬の稲妻(2)


俺は気になっていたことを尋ねた。

「女は停学処分…男の方は?」
「なーんも。無傷だよ」

“先輩”が面白くなさそうに言う。

「吐かないんだよ、男の名前を」と、ため息を合図に腕組みをして「誰と付き合ってたか言わないんだよ、その子は」

「言え、という方に無理がある」と横で“会長”。

「自分の裸の画像、という人質を取られた状態で報復されるかもしれないことを考えれば口を噤むのは理解できる。ましてや、相手は“学校側”、醜聞を嫌って生徒を一方的に悪者にしかねない」

俺は、与えられた情報を整理する。

天海の学校で、教師と生徒が付き合っていた。
2人が別れた後、生徒の方は画像が流出し、個人が特定。
一方、教師の方は未だに誰であるか不明。
その教師が、生徒と共に写っている画像というものが存在し、年内にもどこかに晒されるという噂が立っている。

「天海は主体的に関わっているのか?」

独り言が漏れ出た。
“会長”はそれを自分への質問と解釈したのか、続けた。

「わからない。だが、男の方の画像を持っていて年内に晒そうとしているのは彼女だという噂もある」
「天海が?」
「天海はさー、停学した後輩の心配して相談とか受けてたらしい。夜会ったりとかもしてたようだよ。そういう話、聞いてない?」

「ない」と言いかけたのを思い止まった。
話として聞いたことはないが、一時期、電話するたびに出先だと言われたことがある。何も不審に思わなかったが、もしかしたらそれこそ相談に乗っていたのかもしれない。

「天海が問題の画像を持っているとして――いや、事実はこの際どちらでもいい、天海が問題の画像を持っていると当事者である教師が信じているとした場合…牛島君、君がその教師だったらどうする?」
「画像を天海から回収する」

間髪入れずに答える。
これ以外の答えはない。

“教師”は、生徒の画像が出回り、そのために生徒が停学処分になっても名乗り出なかった人間だ。かつての恋人であったにもかかわらず。
保身を考えているに違いなく、自分の写っている、晒されると噂されている画像は是が非でも回収したい、しなければいけないと考えているはずだ。

そのためならば…天海に危害を与えられるかもしれない。

俺は、彼らの危機感をようやく理解した。
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