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【HQ/R18】二月の恋のうた

第21章 冬の稲妻(2)


「おい、天海いたか⁉︎」

通路の反対側から走ってくる声。
目を向けると“会長”だった。
“先輩”が胸の前で手をクロスさせる。
それを見て駆け足から徒歩に変えた“会長”は、“先輩”に劣らぬ深刻そうな顔をした。

「向こうにはいなかった。…牛島君に事情を話したのか?」
「これから」

一瞬、2人は目で会話をした。
その後、“会長”が俺へ身体ごと向き直り口を開く。

「妙な噂を聞いてる」
「天海がそれに関わっているかもしれない、と?」
「巻き込まれた、というのが正しいかもしれない」

“先輩”は「首を突っ込んでる」と言っていたが、いま“会長”は「巻き込まれた」と表した。
彼らも正確には内容を把握していないということか。

「最初から話そう。…教員と付き合ってる女の子がいる。女の子は生徒会の人間。そんな噂が夏頃からあったらしい」
「わかってると思うけど、その子は天海じゃないからね」

俺は黙って先を促す。

「その教師と生徒は、まあ当然だけど、一線を越えたらしい。が、秋には別れた。…ここまでならば、ただの色恋話だ」
「問題になったのは別れた後、ね。10月に入った頃かな、私らOBでもこの件を知るに至った事件が起こった」
「事件?」

「画像の流出」

端的に“会長”が言う。

「女の子の裸の画像がネットに流出した。OBが作ってる、うちの学校出身者が集まるコミュニティ・サイトを介して。目元はモザイク入りだったけど、そんなものは意味をなさなかった」

ある種の聞き慣れたトラブルだが、身近で起こったことはない。

「1度ネットという世界にアップロードされた画像はどこまでも拡散していく。学校側が気付いた頃には手のつけられない状態だった」

“怖いのは本人の記憶じゃなくて、第三者の記録かな”

春高予選の時だったか。
天海が言った言葉の意味を、いま、知る。

「女の子は停学処分。罰というよりは保護の観点が強いね。生徒会の人間だったことで、天海は責任を感じていたし、色々相談に乗っていたみたいだ」
「妙な噂というのはそれですか?」

ショートカットを試みた。
“会長”が「男の画像」と言った。

「晒されたのは女の子の方だけ。男、教師だね、そいつと女の子が裸で写った画像ってのも存在していて、それが年内にも晒される…そんな噂が立ってる」
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