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【HQ/R18】二月の恋のうた

第20章 冬の稲妻(1)


「そ、そういう質問はどうかと思います! 先輩だって、会長とどうだったのかとか聞かれたら」
「昨日? 2回ヤったけど」

明け透けな回答に天海が口を開けたまま言葉を失った。

「どういう体位で2回だったかっていうとねぇ…」
「おい、そろそろ黙れ」

思わぬ暴露に釘を刺したのは、悠然と俺たちのところへ歩いてきた“会長”だ。
当事者であり、かつ、純然たる被害者…になりかけている。

「他人の性癖に関わることをベラベラしゃべるな」
「聞かれたことを正直に話すのは私の長所だ」
「聞かれてないことまで話そうとしてたのがお前の短所だ」
「あれ、聞かれてなかった?」
「誰も聞いてない。回数も体位も。さらに言っておくけど、ここにいる誰1人として、知りたいと思っていない」

“会長”が冷然と言い放つ。
天海の話し方に似ているなと俺は思い、
(いや、逆だな)
と、すぐに思い直した。

“会長”が天海に似ているのではない。
天海が“会長”に似ているのだ。

きっと、天海が生徒会長に就くに当たって、「手本」としたのは彼だったに違いない。

昨日、眼前の“先輩”がしてくれた話を思い起こす。

“男バレのマネが、うちのと天海ができてるって馬鹿な噂立てて…”

――過去に流された噂の発端を垣間見た気がした。

「おい、天海が固まってるぞ」
「ホントだ。…なんで? 昔はこのくらい話していたはずだよねぇ…天海、四つん這いのバックとか背面座位とか好きだって――」
「先輩ッ‼︎」

とうとう大声を出した天海。
まるで子供が気に入らない言葉を聞いて声を張り上げるようだ。天海にしては何とも珍しい。
びっくりして眺めやりつつ、俺は頭の中で別のことに気をとられる。

四つん這いのバック。
背面座位。

「もう、しばらく先輩とは口ききません!」

きっぱりと言い切って、天海が“先輩”の抱擁から抜け出した。
そしてそのまま、俺たちにも背中を向け、1人で会場入り口へ足を向けてしまう。

「ちょっと、天海ー!」

慌てた“先輩”が後を追いかける。
俺の真横で“会長”が「なにやってんだか」と嘆息を漏らしてから「俺たちも行こうか」と自然に会場入りを促したので、俺たちは全員で天海の後を追って行った。
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