第19章 ★王者の休日(5)
「気持ちいいか、天海」
耳元に囁きを落とす。
ベッドの中、横になった天海を、俺も同じく横になった状態で後ろから抱きしめ、秘所をゆっくりと解している。
腕の中に閉じ込めた天海は、わななきながら首を縦に振った。
が、すぐに、挿し入れた指の動きに身体を震わせた。
「ぁっ、ぁぁっ!」
天海の背と俺の胸。
合わさった肌から彼女の挙動が――息を殺して耐える微動すらも、俺に伝わる。
「んぁっ…はぁ、はぁ…ぁ…ゃぁっ…」
2本の指を根元まで挿れて、彼女を細かく震わせ、同時に耳朶の裏側にも舌を這わせた。
「あぁ…や、若利、くんっ…!」
喉から掠れた悲鳴。
俺は肩を強く抱きしめる。
天海は、自分の肩に回された俺の腕を、両手で掴んで鳴いた。
「やぁ、はぁ…あ、あぁん…」
俺は目を閉じる。
彼女の愛液でひどく濡れた左手。
爪を立て、痛いほどに掴まれた右腕。
鼻腔をくすぐる汗の、天海の匂い。
…誰よりも近くに、彼女がいる。
俺の腕の中に、バレーボール・プレイヤーとしての俺ではなく、牛島若利という“個”を見つめ、認め、求めた女がいる――。
「あぁっ、ぁっ…やぁ…わか、とし、くん…」
執拗とも言える愛撫に、天海が俺を呼び、欲する。
下半身を硬く漲らせながら、俺は自身を抑え、天海の声を胸に刻む。
許されるならば…ずっとこうしていたい。
時計の針を止めて、この部屋を世界のすべてに変えて。
明日の夜には、この肌の温もりは傍になく、そして、また暫くの間、記憶の中でのみ息づくことになる。
(身勝手だな)
ふと、自嘲が込み上げた。
遠距離恋愛。
会うたびに欲情して抱く。
なかなか会えないという環境を作っているのは俺自身であるのに。
完全な独りよがり。
(子供だな、俺は)
綿あめをねだっていた頃と変わらない。
欲しいものは欲しい。譲らない。
「だ、め…わかとし、く…」
天海が、よがる。
薄っすらと目を開けて、うなじに口付けた。
「また、イ、ちゃう、よぉ…」
「そうか…」
「私だけ…やぁ、やだぁ…」
ぐっしょりとした手で音を立てて彼女を奏でる。
俺のものだ。
天海は俺のものだ――俺にとっての必要な存在だ。
大きく揺れる瞬間も、俺は彼女を抱いて離さない。