第19章 ★王者の休日(5)
横臥した姿勢のまま、天海の中へ入る。
避妊具の存在を忘れてしまいそうになるほどの熱さと感触に俺の口からも声が漏れた。
この夜だけで、もう、4度目の性交。
うち、今回が最も緩慢な挿入。
だが、俺のすべてを受け入れた天海は“それ”だけで感じたようで震える吐息を吐き出した。
「ぁ、はっ…ぁ、ぁ…」
掠れた声が妙にそそる。
愛液を舐めとり、代わりに俺の唾液で濡らした指で天海の花芯に触れた。
ほとんど身動きが取れない状態で、それでも身を捩り、天海が鳴く。
「あんっ…ん、ん…ぁ」
その声が俺を呼んで、この夜初めての言葉を綴る。
「…若利、くん…っ…あり、がとう…」
それが感謝を意味する言葉だと理解したのは数秒経ってからだった。
華奢な身体を傷めぬように抱き留め、俺は少しずつ角度を変え、静かに腰を打つ。
よがる天海の、薄暗闇でも美しいとわかる漆黒の髪が火照った肌に張り付き、俺が狂ったように残した激情の証を僅かに隠す。
ならばと、新たにまた痕を残して、俺も名前を呼んだ。
「ありさ…」
手折らぬように愛しながら。囁く。
「今の『ありがとう』の意味を、教えてくれ」
天海が振り向いて身体と同じく熱を孕んで濡れた瞳で俺を見つめ、白い細腕を伸ばして俺の頭を抱いた。
「…お礼…私を、受け入れて、くれた…っ…強いって、言って、くれた…」
「ありさ」
「あなたに…出会えて…抱かれて、幸せ…っ」
俺は深く息を吐き、ぐっと、自身を押し込んだ。
肉体的な快感に、精神的な快感。
それらが縒り合い、我慢していた自分のものが歓喜の声を上げた。
合わせて、俺の絶頂に応え腕の中で震える彼女を全身で感じた。
――感謝? それは、俺がお前にすべきものだ。
俺を見つめ、俺のような強く在りたいと願い、顔を上げて前へと進む存在。
正直、俺は自分が“強い”のかはわからない。
だが、彼女が俺をそう評し、俺にこれからも“強さ”を求めるならば…そうありたいと思う。
俺は約したのだ。
彼女の視界の中で、常に、遅れぬよう、さらに前を歩き続けることを。
その誓約が俺を縛り続ける限り、俺は決して妥協はできない。
(お前が傍にいる…それが、俺を強くする)
天海は「標べ」なのだ。
俺がこの先へ強く在るために必要な。