第18章 ★王者の休日(4)
「聞こ、えるか…?」
真っ当な返事など到底不可能な彼女へ、俺は、自分も息を弾ませて問いかける。
何が、とは言わない。
言わずともわかるはずだ。
腰の律動に合わせて、ぐちゅぐちゅと、天海が音を立てている。
「や、あんっ! は、はげし、あ、あ、あっ!」
大人びた佇まい、理知的で常に自制の効いた言動、絵に描いたよう“優等生”。
それらが嘘のように、天海が、ただの女になって乱れる。
――俺の女だ。
誇示したい想い。
川西への怒りのようなもの。
感じたことのない、名前も知らない感情に衝き動かされる。
すべて俺のものだ。
彼女自身ですら知らない彼女も、すべて、俺のものだ。
「あっ、あぁん…!」
天海の瞳が熱で潤み、虚ろなものになる。
そして、はしたなく立てられる音に合わせ、彼女自身が腰を動かし始めた。俺に脚を押さえつけられ、自由にならない体勢だというのに。
――感じているのだ。俺を。
俺が彼女を感じているように、彼女もまた俺を感じている。
俺を求めて、いる…!
「ありさ…!」
感情が爆ぜる。
脚から手を離し、肩ごと彼女を抱きしめた。
「あぁ、はぁ、わ、わか、と――あっ!」
汗まみれの肌が吸い付き合う。
その肌の中の中まで、肉体という境界線を取り払い、まぐわう場所と同じように溶けて1つとなってしまいたい。
「お前が、好きだ、ありさ」
「あ、わ、わた、し! あ、あんっ!」
「渡さ、ない。誰で、あろう、とも。――俺の、ものだ…!」
深く、深く、深く。
誰も届かない場所へ、深みへ、共に行きたいと願う。
2人で。
他の誰でもない。
替えなど効かない。
お前でなければダメだ。
お前でなければ意味がない――。
不意に、天海の手が俺の背中に回された。
激痛が走り、俺は左目を瞑る。
背に爪を立てられた。
と同時に、俺自身も締め上げられる。
凶暴な程に強く。
「イ、ぁ、ぁ、ぁ…!」
俺に縋り、天海が悲鳴を放った。
激しく打ち付けながら、俺も彼女の肩を強く抱く。
「あぁぁぁぁぁっ!」
「…くっ!」
華奢な身体が大きく震えた。
今まで以上に強く咥えられた俺自身も達する。
「ありさ…!」
彼女との3度目の交わり。
俺は、狂おしいほどの感情を抱くその名を呼びながら、果てた。