第18章 ★王者の休日(4)
帰さない。
返答は要らなかった。
あれは質問などではないのだ。
あれは、俺の“決意”だ。
「んっ…んっ…」
舌を挿れ、口内を撫でまわす。
抱きしめた身体が揺れ、その都度、くぐもった声が上がる。
手の平でうなじを覆う形で頭を支え、口付けをより深く。
反応を充分に堪能してから、俺は静かに唇を離した。
「…は、ぁっ…」
吐息が甘い声音を伴ってこぼれ落ちた。
薄く目を開けると、胡乱な彼女の瞳を捉えた。
「天海…」
混じり合った唾液が引く透明な糸を切って、俺は唇を彼女の耳朶へ寄せた。
「お前は間違っている。お前は…強い女だ」
「ン…強い、女…?」
問い返しには答える代わりに耳朶を軽く食んだ。
「ひぁっ…」
短い悲鳴。
反射的に天海は顔を背けようとしたが、俺の手はそれを許さない。
食んだ部分を舌で突くように舐め、次いで、耳の輪郭を辿り確かめる。
彼女を華やかに彩った耳飾りは口で咥えて外した。
「…強く…ぁっ…ないよ…」
溝を埋めるように耳の内側まで舌でなぞると、与えられる快感に天海が耐えながら言った。
俺は外したアクセサリーを自分のポケットへ落として、再び自由になった舌先で小さな耳穴の
入り口、そこにある突起をそっと舐めた。
「はぁんっ…!」
天海が、声を上げた。
「いゃぁ…やぁ」
「…感じてるのか」
息を吹きかけて言葉を投げ込み、突起を舌先で突く。
「あっ、あっ、あっ!」
――ここも“そう”か。
俺は天海の反応を記憶の中にしっかりと刻み、その突起を舌で突いては音を立てて舐めた。
「や、ぁ…ぁっ、あっ!」
そして、不意に、穴にまで舌を挿れる。
「あんっ…は、ぁん!」
舌を出し入れする動きに、天海が声で、身体で、応える。
“ありさちゃんって、耳、弱いんだー”
天童の声が脳裏で蘇った。
弱いとはこういうことか。
理解すると同時に、天童は“このこと”を知っていたのかと思い至り――負の感情も覚え、俺は彼女の耳を執拗に責め立てる。
「あっ、あっ、やぁ」
泣き出しそうな声。
その甘美な音に、俺の身体が肌を重ねた時間を思い出す。
空いたままの右手を彼女のジャケットの下へ入れ、ブラウスのボタンを外しにかかる。
固い。
引きちぎりたくなる気持ちを懸命に抑えた。