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【HQ/R18】二月の恋のうた

第17章 王者の休日(3)


部屋はホテルの6階、隣同士とはいえ入り口が離れた2部屋だった。

片方はエキストラベッドを入れての3人部屋。そこへ大平、瀬見、天童が入って行った。
天童など、わざわざ中に入ってから1度半身を外に出し、
「じゃ、夕飯行く時に声かけるからネ!」
と言っていく。

言葉を詰まらせる天海の代わりに、俺は2人分の了承を「わかった」の一言で片付けた。

カードキーで部屋を開けて、俺たちも中に入る。
典型的なビジネスホテルのツインルーム。
大きくもない窓からは、駅近という立地条件からひっきりなしに通る車が見下ろせた。

「わ、私…話をするだけだから」と天海が言い訳じみた口調で「先輩に、遅くなるようなら泊めてもらう約束取り付けたばっかりだし!」

俺は荷物を備え付けのテレビの横に置き、自分はベッドの端に腰掛けた。

――このホテルの宿泊費は、大平の話では、一旦学校側がバレー部の予算から銀行振込で立替支払いを行うらしい。

その後、バレー部のOBや父母会から集められてプールされていた活動費より遠征費用として拠出、学校側へ返還。俺たち4人は、掛かった費用のうち半分をプールされた資金に戻すという流れになったそうだ。

大人1人がカードで立替払いをするだけの話が随分とややこしくなった、と鷲匠監督がボヤいていたとのこと。

コーチの代理は、見つからなかったのか、見つけなかったのかは定かではない。

宿泊費に関しては当日のキャンセル料が全額負担であり、新しい引率者は東京までの旅費を考えると、来る方が時間も金が掛かるという理由から見送られたそうだ。

結果、1部屋当たりの料金は4人より5人の方が割安なため宿泊予約はそのまま、実際の利用は1部屋2人ずつとすることに決まったようだが――。

(どうせなら泊まっていけというのも道理か…)

天童たちは、事情を説明した後で俺と天海をこの部屋に押し込んで退散していった。

大平はあえて何も言わなかったが、瀬見は目で語り、天童は口でも語った「泊まればいいじゃん」と。

天海が顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。

「そもそもが泊まる予定じゃなかったし…」
「――天海」

放っておくと延々と“泊まらない理由”しか話さなそうな彼女を俺は止めた。
そして、自分から斬りこむことにした。

「お前のことを聞かせてくれ」
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