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【HQ/R18】二月の恋のうた

第16章 王者の休日(2)


周囲が思わず振り返るような天海の“先輩”の笑い声、それを隣の“会長”が拳1つで収束させたところで、少し距離を取って電話をしていた大平が戻ってきた。

「監督、何だって?」

瀬見の問いに、大平は「詳しいことは後で言うけど、とりあえず、俺たちが心配することはなくなったよ」とリラックスした表情で告げる。

大平が戻ってきたことを契機に、天海が俺たちと“先輩”たち、双方を簡単に紹介し、それぞれに挨拶を交わした。

天海が“先輩”と呼んでいたのは、今年の春に卒業した、彼女の学校の女子バレー部の元部長。“会長”と呼んでいたのは、同じく今年卒業した男子バレー部の、こちらは天海の前の生徒会長だそうだ。

「生徒会をやりながら部活をされていたんですか」

感嘆を込めて大平が言うと、“会長”は苦笑を浮かべた。

「うちは君たちほどの強豪校じゃないから…しかも、実際は両立してたなんて言えなくて、仕事は優秀な副会長と、それから、君たちの前にいる1つ下の優秀な会計殿が回してくれてたよ」
「お飾り生徒会長」
「こら。本当のことでも言っていいことと悪いことがある」

わざと悪し様に言う“先輩”を“会長”が注意する。
2人は恋人同士なのだと天海から紹介があったが、言われなくともわかる雰囲気だった。

会話が一区切りしたところで、思い出したように全員で会場へ移動する。
時間はたっぷりあるので急ぎはしないが、いつまでも立ち話で注目を浴び続ける必要性もない。

先頭を天海、“先輩”、“先輩”とまるで古くからの知り合いのように談笑する天童が一塊となって歩き、その後ろを大平と瀬見が続く。

俺は最後尾だ。
“会長”に声を掛けられ、呼び止められたのだ。

「せっかくのところを、うちのが邪魔して悪かったね」

彼は、最初にそんなことを言った。

「いえ」
「彼女と…天海と付き合って――」

そこまで言ってから、“会長”が口を噤む。
出てくる質問を待っていると、彼が笑って頭を振った。

「いや、何でもない。立ち入ったことを聞くところだった。悪いね。天海は…知っていると思うけど、一生懸命ないい子だから。一生懸命で、責任感が強くて、自分のことなんて後回しにする子だ」

“会長”は、俺の目を見て、言った。

「…泣かせないで欲しい」
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