第10章 家光様の帰城ー四日目・鷹司ー
なんだこれ、夢か?
今度は俺がそう思う番だった。
紗代は俺の名前を呼びながら腕の中で泣いている。
そんなに俺に会いたいと思ってくれてた……のか?
抱きしめていいものか迷って、そっと背中をさする。
「鷹司っ、あのね、私、鷹司のことが むぅっ… 」
紗代が急に顔を上げて話し始めるから、手で口を塞いだ。
さすがに何を言われるかわかったけど、必死で抜け出してきた俺の台詞とるんじゃねぇよ。
「俺の話、先に聞け。」
紗代は泣きはらした目で頷いた。
「俺は、おまえが好きだ。」
濡れた睫毛で何度か瞬きしたあと、紗代は言う。
「鷹司……、もう一回ほっぺたつねって。」
今度は両手で柔らかい肌をつまむ。
「夢じゃないって言ってんだろ。」
夢でたまるか。
そのままその手で頬を包んで、紗代に口づけた。
唇を離して紗代の顔を見る。
潤んだ目で見上げられると自制心の箍は簡単にはずれた。
もう一度、今度は深く口づける。
柔らかい唇も、艶かしく動く舌も俺を煽ってしょうがない。
紗代の手が背中にまわってきて、俺は紗代を押し倒した。