第10章 家光様の帰城ー四日目・鷹司ー
なんでこいつ、これつけて寝てるんだ。
すやすやと眠る顔を見ながら、淡い期待が浮かんでくる。
つい手が伸びて、髪を撫でた。
「んぅ… 」
紗代が寝返りを打つ。
仰向けから横向きになり、着物のあわせが少しだけずれて隙間ができた。
触りたいのは髪だけじゃない……。
紗代の寝乱れた姿に劣情を催し、慌てて起こすことにした。
「紗代、起きろ。
おい、紗代。」
あまり大きい声は出せないので、少し揺さぶる。
「んー。なに?誰?何時?」
薄く目を開けたが、まだ少し寝ぼけているようだ。
「俺だよ、鷹司。」
そう言った途端、紗代がハッとしたように目を見開き飛び起きた。
「な、んで、ここに、いるの?」
「おまえに会いに来たんだよ。」
「夢?!」
「夢じゃないから、ほら。」
紗代の頬をつねってやる。
「いたひ!」
「な?」
そう言って笑うと、紗代の目にみるみる涙が溢れてきた。
「悪い、そんなに痛かったか?!」
「そうじゃないよ……、鷹司、会いたかった!」
紗代は俺の胸に飛び込んできた。