第8章 家光様の帰城ー二日目・九条ー
「なんか、上様元気ないね。
甘いものでも一緒に食べよー。」
「わっ、ちょっと!」
断る隙もなく、腕をぐいぐい引っ張られ九条の部屋に連れ込まれた。
「はい、どーぞ。」
「いただきます……。」
出してくれた和菓子を口に運ぶ。
「ねーねー、ずっと気になってたんだけど、上様じゃないよね?」
突然の質問に、和菓子を喉に詰まらせそうになった。
「はい、お茶。」
むせながら、もう明後日出て行くんだし九条にならバラしちゃってもいいかなーと考える。
お茶を飲んで一息つくと切り出した。
「うん、ごめんね。
私、上様じゃない。」
「やっぱりねー。
前から全然違うなーって思ってたんだよねー。
それに、いま上様はお部屋で鷹司のこと軟禁中のはずだし。
ほんとは、なんていう名前?」
軟禁中?言い方が引っかかるけれど、とりあえず答える。
「紗代だよ。
もうすぐここを出て行くから覚えてもらっても呼んでもらう機会ないと思うけどね。」
「へぇ、可愛い名前。」
「ふふ、ありがとう。」
九条って一緒にいるとなんか和むな。
この雰囲気が今は救いだ。
「なんか、事情はあるんだろうけど、いいの?」
「え?なにが?」
「あんた、鷹司のこと好きでしょ?」