第8章 家光様の帰城ー二日目・九条ー
「どうやら、上様は今回ばかりは本気のようだ。
二人とも湯浴み以外、部屋から出て来ない。」
そうなんだ……。
昨日、火影に言われたことを思い出して、気持ちが沈む。
夜を過ごしたってことは、そういうことだよね……。
「どういう心境の変化かは知らないが、喜ばしいことだ。
それで、貴方の今後だが……。」
「はい。」
緊張で手が冷たい。
「明後日、城を去れ。」
え、そんなに早く?
私の気持ちが顔に出てしまっていたのか、春日局様が続ける。
「同じ顔が2人、同じ城にいるとなると、影武者のことが露見してしまう可能性が高い。
面倒が起きる前に今日、明日で身辺をまとめ早々に去るように。」
私に拒否権はないんだ。
「わかりました。」
そう言うしかない。
………………
わかっていたことだったけど、いざ決まると衝撃が凄い。
心にぽっかり穴があいたみたいだ。
町に戻って、今まで通りの生活ができるかなぁ。
ほんの少しの間だったけれど、鷹司がいてくれたからここの暮らしも楽しかった。
帰り道は1人。
ほとんど放心状態でぼんやり歩いていると、真横の襖が開いた。
「あー、上様?なんでここにいるのー?」