第8章 家光様の帰城ー二日目・九条ー
翌日、春日局様に呼ばれた。
私が今後どうなるのか、言い渡されるんだろう。
昨日は目を閉じてもなかなか寝付けなかった。
考えてもしょうがないのに、頭には鷹司のことばかり浮かんでくる。
「紗代様、迎えに来たよ。」
火影だ。
家光様は鷹司と部屋に篭りきりで、それは周知の事実。
私が大奥に行って誰かに会ってしまうと困るため、永光様のお茶の時間に合わせてこっそりと春日局様のところへ行くことになっていた。
この廊下を歩くのもこれが最後かな。
来たばかりの頃は、こんな気持ちになるとは思わなかった。
全部、鷹司のせいだ。
「着いたよ?」
「あ、うん。」
考え事をしすぎて、到着したことにも気がつかなかった。
「ありがとう、火影。」
襖の前に座って中へ声をかけようとした私に、火影が先に話しかける。
「あの、紗代様、俺、待ってるから。
簡単に気持ちまで奪えるとは思ってないけど、待ってる。」
私は微笑んで頷いた。
そして、私は覚悟を決めて春日局様の部屋に入った。