第7章 家光様の帰城ー初日・火影ー
火影は優しく慈しむように私の唇をついばんだ。
こんな風に私を想ってくれる人が側にいたことに、傷ついた心がほんの少しだけあたたかくなって、この胸に甘えたくなってしまう。
私は火影の背中に手を回した。
すると一度唇が離れ、鼻が触れるほどの距離のまま、逡巡するように僅かの間静止したあと、火影は激しく私を求め始めた。
口づけは深くなり、舌が絡みつく。
身体の芯に熱が灯りかけた時、火影の手が帯にかかった。
「んんっ ちょっ と、待って……。」
火影の胸を押し、身体を離す。
悲しいけど、寂しいけど、このまま身を委ねていいものか迷った。
私は、鷹司に触って欲しかった。
鷹司とこうなりたかったはずなのに。
俯いて、そう考えているとまた目に涙が浮かんでくる。
「紗代様が操を立てたいと思ってる相手も、今ごろ家光様とこういうこと、してるはずだよ。」
ハッとして、顔を上げる。
「だから、もう泣かないで。
俺が忘れさせてあげるから。」
私は、自分から火影に口づけた。