第28章 99+2 ー王宮アランー
「わぁ……。」
雲ひとつない青空の下、一般開放されたウィスタリア城は華やかに飾り付けられ、城下の人々がひしめきあっている。
「お手をどうぞ。」
馬車から降りる時に差し伸べられた手。
自分がほんとうのプリンセスになったということが、いまだに夢のように感じられるけれど、ミルクを支えてくれるこの手は出会った時からずっと変わらない。
あの日、名前も知らなかった彼の手を握った瞬間からミルクの運命が変わった。
見渡すと、久しぶりに見る顔、初めて見る顔……。
5年の間に色々なことがあって取り巻く環境も変わっていった。
でも1つだけ変わらないことがある。
「アラン…… 」
ミルクはニコリともしないでレッドカーペットを歩いていくアランを見上げる。
「なに?」
「こうやってここで隣を歩くことができて本当に嬉しいよ、ありがとう。」
「……バーカ。いきなりこんなとこでそんなこと言うな。」
「だって今言いたかったんだもん。照れた?」
「おまえな、後で覚えてろよ。
……ったく、なに笑ってんだよ。」
「幸せだなぁって思って!」
素直な反応が返ってこないのも、でもそれがどんな意味なのかも知っている。
それはずっと一緒に時を重ねてきたから。