第26章 隣にいるだけで ー王宮アランー
寝起きの鼻にかかった声で、顔を隠したまま話すアランに、
(照れてるのかな?ちょっと可愛い。)
そんなことを思いながら笑って答える。
「ふふ、気持ち良さそうだったから起こせなくて。」
もう一度ミルクの方をアランが見た。
「……で、どうしたんだよ。公務は?」
「早く終わったから、アランに会いたくて探しにきたんだよ。
よかったら一緒にお茶したいなと思ったんだけど、まだ寝てたかったら…… 」
そう言いかけたミルクを優しく遮るように、アランが身体を起こしながら告げる。
「いい、起きる。
なんか、お前の顔見てたら、目、覚めた。」
「え?なんで?」
「俺にすげぇ会いたかったって顔してるから。」
「うそ!」
ミルクは咄嗟に顔を覆う。
「違うの?」
「違わないけど。
……もう、意地悪。」
「別にそんなつもりはなかったけど……、俺も嬉しかったし。」
(不意打ちずるい……。)
アランは笑って、返事に詰まるミルクの頬を軽くつまんだ。
「そういうとこが顔に出すぎって言ってんの。
お茶、淹れてくれるんだろ?」
「うん。」
キラキラと陽の光を反射する湖を見ながら2人で並んで、何を話すわけでもなく、ゆったりとした時が流れていく。
(久しぶりだなぁ、こんな時間。)
「ねぇ、…… 」
話しかけようとアランの方へ顔を向けると、思いがけず自分を見つめる瞳と視線がぶつかり、ミルクは戸惑った。
黙っていると、そっと顔が寄せられ唇が重なる。
優しくついばむようなキスが長く続いて、つい笑いが溢れた。
「ふふっ、……っん、ちょっと、アラン……っ!」
「なに?」
「どうしたの?」
鼻が触れそうな距離のまま問いかける。
「……おまえがそんな格好してるから。」
(あ、気づいてくれてたんだ。)
ミルクが顔をほころばせるとアランが続けた。
「そんな嬉しそうな顔するなよ。
まだ何も褒めてないだろ。」
「今のが充分褒め言葉だって知ってるからだよ。」
「バーカ。じゃあもうこれ以上何も言わなくていいんだな?」
「え、やだ!聞きたい!」
「言わない。」
アランは楽しそうに笑っている。
「お願い!私今日頑張ったから、ご褒美と思って、ね?」
「ふうん。じゃあ言うけど……。」