第26章 隣にいるだけで ー王宮アランー
(アーサーの散歩だったら多分こっちだと思うんだけど……)
外へ出てアランを探すミルクの手にはバスケットが下げられている。
少し歩いた先にある湖のほとりで、遠くにアーサーを見つけた。
眩しい日差しの中、風に揺れる草原で駆け回っている。
しかし、見回してみてもアランの姿はなかった。
(ひとりでここまで来れないだろうから、一緒にいるはずなんだけどな……。)
少しずつ近づいていくとアーサーもミルクに気づき、側へかけよってくる。
「アーサーこんにちは。アランは?一緒じゃなかったの?」
しっぽを振りながらミルクを見ていたアーサーは、くるりと反対を向いてまた走って行った。
「え、ちょっと待って!」
慌てて追いかけた先に、ミルクは探していた人の姿を見つける。
アランは柔らかく注ぐ木漏れ日の下で、寝息を立てていた。
(こんなところで……。
アランも久しぶりのお休みだったし、疲れてたのかな。)
音を立てないように気をつけながらシートを敷いてアランの隣に腰掛けると、バスケットの中からティーセットを出して並べていく。
(いっしょにお茶できたらなって思ってたけど……。
起こすのは可哀想だな。)
アランと、そのそばに寄り添って丸くなるアーサーを見ながらミルクは思わず微笑んだ。
(ただこうして隣にいるだけなのに、なんだかとても幸せ。)
優しい風が、アランの髪を揺らす。
ミルクはそっと手を伸ばした。
(なかなか触らせてくれないから、これはちょっとチャンス……。)
そう思いながら、気づかれないように指で髪を梳く。
(いつも思うけど柔らかくてさらさら……。)
その時ひときわ強く吹いた風に、アランが眉を寄せた。
「ん……。」
慌てて手を戻すと、薄く瞼を開けたアランと目が合う。
「あ、おはよう。」
「なんだ……いたのかよ。」
アランは腕で目を隠すとそう言った。
「うん、起こしてごめんね。」
「いつから?」
「えっと、今来たばっかりだよ。」
「黙って人の寝顔見るなんていい趣味してる。」