第25章 消さないでー佐助ー
「え……?!」
えっと、あーんしてってことだよね?
慌てる私を見て佐助くんも察したらしく。
「あ、こういうことは恋人同士でしかやらない?のか。
ごめん、ちょっと手を洗ってくる。」
そう言って立ち上がる。
ここから手洗い場遠いんだよね……。
「せっかくのお茶冷めちゃうから、いいよ、食べさせてあげるくらい。
……ちょっと恥ずかしいけど。」
「じゃあ、お願いします。」
お饅頭を半分にして、佐助くんに差し出した。
「はい、どうぞ。」
さすがに、『あーん』とは言えないしね……。
お饅頭はパクリと佐助くんの口の中に消える。
気恥ずかしくて、次の言葉が出てこない。
「さすが、信玄様チョイスなだけあって確かにおいしい。
もう半分ももらってもいい?」
「うん。」
同じように差し出そうとすると、何かに気づいたように佐助くんの動きが止まる。
次の瞬間、手首を掴まれ引っ張られた。
「紗代さん、こっち。」
「えっ?!」
気がつくと私はとても狭い空間で、佐助くんと密着していた。
これは、隠し部屋?
声を出したらいけない気がして、自分の胸の鼓動だけを聞いて黙っていた。
すると……。
「佐助ー?!」
襖の開いた音がしたと思ったら、幸村の声がする。
「あれ?いねーの?
さっき紗代が向かってたの見かけたんだけどな……。
どこいったんだろ。」
再び襖の音がして、幸村は去っていった。
「え、と、佐助くん?」