第25章 消さないでー佐助ー
そろそろ疲れてる頃かな?
私はお茶とお菓子を持って佐助くんの部屋に向かっていた。
空いた時間があれば、難しい計算をしたり測量したり、ワームホールに関する研究を続けている佐助くん。
人質となって春日山城に住むようになってから、佐助くんと気軽に話せるようになって嬉しい。
やっぱり現代人仲間だから、気が許せるんだろうな。
「佐助くん、いる?」
「紗代さん?どうぞ。」
「お邪魔します。」
少し前までは私が言われてたセリフだったのに。
ちょっとくすぐったい。
「ちょっと休憩して、お茶にしない?」
「いいね。じゃ、この計算が終わったら。
すぐ終わるから待ってて。」
邪魔にならないようにそっと覗き込むと、やっぱりわけのわからない数字や記号か並んでいた。
(すごいなー。)
「はい、おしまい。」
佐助くんは顔を上げると、紙と筆を片付けた。
「今日は、信玄様にお饅頭をわけてもらったの!」
お茶の準備をして、お菓子を差し出した。
二人であったかいお茶を飲みながら過ごす昼下がり。
ゆったりとした時間の流れがとても心地良い。
そんなことを考えていると、湯呑みを置いた佐助くんが言った。
「いただきます、と言いたいところなんだけどちょっと手が汚れてて掴めないな……。
紗代さん、食べさせてくれない?」