第24章 忍ぶ想い ー佐助ー
引き続き静かな空間に、衣擦れの音と紗代さんの小さな喘ぐ声が響く。
これ以上ここにいるのは色々とマズい。
そう考えながら足を踏み出すと、天井の戸板がミシリと音を立てた。
しまった。
「佐助くん?!」
今度こそ気づかれたか。
こんなミスをするなんて、さっき名前を呼ばれたことによほど動揺していたようだ。
「紗代さん、こんばんは。今いい?」
「えっ、と、10秒待ってもらえる?」
「わかった。」
心の中でゆっくりめに10秒数えながら、自身も落ち着かせる。
「いいよ。ごめんね。」
天井の戸板を外していつものように部屋におりた。
「こんな夜分にすまない。」
「ううん。どうしたの?緊急の用事?」
行灯に火を入れながら振り向いた紗代さんの顔は少し上気したように見える。
着物も慌ててかき合わせたようだ。
正直言って目を合わせられない。
「いや、特に用事はない。
ただ紗代さんに会いたくて。」
「え。」
沈黙が続いた。
「あの、佐助くん、いつから天井裏にいた?」
「紗代さん、俺が嘘つけないの知ってるよね。」
「そうだけど……。あの、聞こえちゃった、かな。」
「うん、すまない。」