第24章 忍ぶ想い ー佐助ー
夜更けに天井裏を進む。
もうここには何度も忍んで来ていて、敵城ながら勝手知ったる庭のようだ。
危険を避けるため、毎回違うルートで紗代さんの部屋に向かうことにしている。
今日は特別何か用事があったわけじゃない。
ただ顔が見たくなっただけ。
俺はあまり意味のない行動はしないはずなんだけど。
これに関する自己分析の結果は、まだ出ていない。
いや、考えないようにしているだけかもしれない……。
いつもより遅い時刻。
まだ起きているか、微妙な時間だ。
紗代さんの部屋の上までたどり着いた。
声をかける前に、かすかな息遣いが聞こえてくるのに気付き動きを止めた。
具合でも悪くして寝ているのだろうか。
忍びの訓練を受けていなければ、気づかないほどの吐息。
どうするか迷ってそのまま耳をそばだてていると、
「んっ…… はぁ…… 」
吐息に紗代さんの声が混じった。
これは……。
人の気配は確かに一人分しか感じない。
ということは、まさか。
天井の戸板をずらしてしまいたい衝動を抑えて、元来た道を戻ろうとした、その時。
「さ、 すけ くんっ…… 」
ふいに自分の名が呼ばれてぎくりとする。
「や…… っ はぁ 」
……俺に気づいて呼びかけたわけじゃない、のか?