第23章 クリスマスリレー小説ー夏津ー(未完)
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(……やっぱり……もう年の暮れ、なんだな……)
鮮やかな紅葉で目を楽しませてくれた庭の木々も、寒々しく葉を散らしていた。
気持ちを切り替えるために足を運んだはずが、淋しげな雰囲気のせいか却って後ろ向きな考えが頭をかすめてしまう。
(寒い……)
はあ、と息を吐く。
その白さに思わず体を震わせた。
「ミルク様?」
声の方を振り向く。
「火影」
「そんな薄着でダメだよ、風邪ひいちゃう」
火影は自分の襟巻きを解くと、ミルクの首に巻いてやる。
てきぱきとした動作であったため、一言も発することなく橙色の布に収まってしまった。
「……あ、ありがとう」
黙ったままのミルクに優しげな声が投げかけられる。
「悩み事?」
「……えっと、その、ね……」
「夏津様はミルクのことが一番大事なんだから、もっと甘えていいと思うよ?」
「え?」
ぐるりと巻かれた襟巻きに埋もれたミルクは、目をパチパチとさせた。
「顔にかい書いてあるよ。夏津様、夏津様って」
「もうっ、火影ったら」
これ以上赤くなれないというほど顔いっぱいに熱を持ったミルクは、ギュッと両手を握った。
火影は「ごめん、ごめん」と笑いながら、それをなだめる。
「からかって、ごめんね。でも甘えていいのになっていうのは本当だよ?ミルク様は頑張り屋だから。夏津様だって、きっとそう思ってる」
「……火影」
「俺はミルク様の護衛なんだよ?ミルク様のことも、いつも見てるし……、ミルク様の大好きな人のことも結構わかってるつもりなんだから」
そう言ってかけてやった襟巻きをそっと整えた。
………………
(あれ?これは……)
部屋に戻ると文机の上に、きらりと輝くものが。
それは……翡翠の帯留であった。