第23章 クリスマスリレー小説ー夏津ー(未完)
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(……夏津の馬鹿……夏津の……)
涙で滲む廊下をどたどたと進んで行く。
想いが大きいだけに、はがゆさ、哀しさに押しつぶされそうだ。
その感情が、足下から伝わる季節の冷たさが手伝って、さらに涙が止まらない。
ドンッ
「きゃっ」
弾き飛ばされそうになったが、とっさに肩を抱かれる。
「…おい、どうしたんだよ?」
「え?」
そっと目を開けると、鷹司の心配そうな顔が覗いた。
……………
「なるほどな……」
もうすぐ日が暮れそうな空を眺め、鷹司は息を吐いた。
二人で葵の間で向かい合い、稲葉の淹れた温かい茶を飲んでいる。
「……よくわかんなくて……。夏津の気持ちが……」
ミルクは、ため息をついた。
「………」
鷹司はミルクの顔をちらりと見てから、ゆっくりと口をつく。
「まあ……あいつもいろいろ苦労人だからな。俺にはわかんねえような、いろんな人生を送ってきたんだろう」
そして優しく笑いながら続けた。
「だけど、いい加減な考えがあってのことじゃねーって、お前もわかってんだろ?」
ミルクは顔を上げる。
「あいつ、手先は器用だけど性格はそうじゃなえからさ。堪忍してやってくれよ」
「鷹司……」
目の端にたまった涙が光った。
「まあ、お前を泣かしたことはブン殴ってやりたい気分だけどな」
鷹司は、からりと笑いながら「お前達には幸せになってほしいからさ」と微笑みを見せる。
「ありがとう……鷹司」