第23章 クリスマスリレー小説ー夏津ー(未完)
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「あ……夏津。」
入り口には、冷ややかな目で二人を見る夏津が立っていた。
不穏な空気を感じとったのか、モモは煌月の手を伝い主人の元へ身を寄せた。
「声もかけずに襖を開けるとは不躾な方ですね。」
夏津は眉をひそめる煌月を無視して、ミルクに詰め寄る。
「何してんのかと思えば……。
俺にくだらないって言われたからこいつに声かけにきたのか?」
「ちょっと、違うよ!」
(私たちの仲は秘密なのに。
煌月様の前でこんなやりとりまずいよ……!)
「それにしては距離がだいぶ近くていらっしゃいましたね。」
口元は薄く笑っているものの、目は鋭く煌月をとらえる。
「じゃじゃ馬が言うことを聞かないもので。」
「へぇ。」
夏津はそれだけ言うと、くるりと踵を返して部屋を出て行く。
(え、待って、更に勘違いしてない?!)
「煌月様、モモはお返ししましたので私もこれで失礼します。」
ミルクは慌てて夏津の後を追った。
(上様とはもう少し親交を深めても良いと思っていましたが……。)
一人心の中で呟く煌月の頬に、モモが慰めるように擦り寄った。
……一方、夏津を追いかけたミルク。
「待って、夏津!」
歩みを止めない彼の袖をつかんで引き止める。
「オコジョのモモが迷ってたから、送り届けてあげただけだよ?
突き放してきたのは夏津なのにそれを理由に勘違いしないで!」
ミルクは先ほど心の中身を話せなかった分、憤りにまかせて気持ちを夏津にぶつけた。
「私は少しでも一緒に過ごす時間が欲しいと思っただけなのに……。」
夏津はため息を吐く。
「理由があんだよ。」
「え……、なに?」
少し間を置いて夏津が答えた。
「……言いたくねぇ。」
「な、にそれ!
夏津の馬鹿。もういい。」
ミルクは目に滲んでくる涙をこらえて走り去った。
「あーもう、なんでこうなるんだよ。」