第23章 クリスマスリレー小説ー夏津ー(未完)
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「……煌月様……?」
「お転婆にも困ったものです」
「え?」
「じゃじゃ馬、と言った方が適切かもしれません」
「あ……あの」
言いかけたが、ミルクの胸元に視線を向ける煌月に気が付いた。
「えっと、モモ……のことですか?」
「お転婆」「じゃじゃ馬」という言葉は、どちらかと言うと城下で好き勝手に暮らしている家光に当てはまるのだろう。
「はい」
煌月はけろりと言い放つ。
「イタズラが過ぎましたので」
後ろを振り返り、部屋中を見渡すように手を向けた。
文机に積まれた書物は雪崩を起こし、その横で硯から墨はこぼれ、畳には金平糖の皿がひっくり返っている。
「叱ったのですが、『我関せず』といった具合でしたので面と向かって説教をしたところ、ヘソを曲げ逃げ出した…というわけです」
先ほどの光景を説明しているのか、おもむろに畳の上に正座をした。
普段椅子での生活を主張している彼が畳に座ること自体不自然に見えるのだが、おこじょと「面と向かう」光景も想像しがたい。
「この融通が利かないと言いますか、強情なのは誰に似たのでしょう」
煌月は、ふんと息を吐いた。
それを見たミルクはつい笑いが込み上げてしまう。
「ときに、上様。先ほどは元気がないようなご様子でしたが」
「あ……えっと、その」
そのとき、急に腕からモモが暴れ出し、落とすまいと身構え体勢を崩してしまった。
「あッ」
「上様」
首元には…ふさふさのモモの白い毛皮が巻き付き……
支えようとしたのか、肩には煌月の両腕が。
「あ……」
「上様……」
ガタッ!!
勢い良く襖が開かれた。