第22章 クリスマスリレー小説 ーアランー
c
「え、それ、うそ?」
ミルクが驚いて声をあげる。
「最後の一個だったんだよ。」
アランが手にしていたのは、ミルクが買えなかったドライフルーツ。
「私が行った時、さっき最後の一個が売れたところだって言われたんだけど!もしかしてすごく近くにいたのかもね。
っていうか、なんでそれ持ってるの?」
「俺も作ろうと思ってたから、同じもの。」
「え、あ、そうなんだ……。」
「なんだよ。」
(アランは言い伝えのこと知ってるのかな。
知っててケーキ作ろうと思ってたのなら……。)
そうなら嬉しいんだけど、という想像で顔がにやけてしまう。
「なにニヤニヤしてんだよ。」
「同じもの作ろうとしてたなんて嬉しいなーと思っただけ!」
ミルクは適当に誤魔化して、ケーキを作ろうとアランを促した。
アランは手際よく作業を進めて、あっという間に焼くだけに。
「はぁー、流石だね。
私なんかよりずっと上手だし慣れてるもん。
ちょっと落ち込む。」
「好きで作ってたらできるようになってただけだから。
練習あるのみだろ。
で、焼きあがったら味見させてもらえんの?」
捲っていた袖を元に戻しながら、アランが聞いた。
「ダメだよ!一緒に作ったけど、プレゼントなんだから。
明日のクリスマスイブにちゃんと渡す。」
「作ったのほとんど俺だけどな。
じゃあ、ケーキは明日まで我慢するから、代わりのもん頂戴。」
代わりって?とミルクがアランの方を向いた時には、唇が重なっていた。