第21章 過ぎ去りし時 ー秀吉ー
女性は手に持った何かを、秀吉さんの口へ持って行った。
あ、お団子?
よく見ると、女性が出てきたのはさっきご主人に聞いたお団子屋さんだ。
胸の奥がキリリと痛む。
あぁ……見るんじゃなかった……。
それ以上そこにいられずに踵を返すと、私は反対方向へ歩き出した。
歩き出したものの、そっちへ行っても帰れるわけじゃなく、結局時間を潰して適当なところで引き返した。
無駄に歩いて足も痛いし、悲しいんだか嫉妬だか、なんだかわからないモヤモヤした気持ちを抱えたまま御殿に帰り着く。
もう暗くなっちゃったな……。
足元を見ながらとぼとぼと廊下を歩いていると、
「紗代!!」
秀吉さんが私を呼ぶ声がして顔を上げる。
「こんな時間までどこ行ってたんだ!
心配したんだぞ。
荷物持ってやろうと迎えに行ったのにどこにもいないし。」
今一番会いたくないのに。
「なんで黙ってるんだ。」
あ、やばい涙出そう。
こんなことで泣きたくなくて歯を食いしばる。
そんな私に気づいたらしい秀吉さんは、私の手を掴むと俺の部屋に行くぞ、と歩き出す。
「や、やだっ、離して!」
「離さない。」
握る力を一層強められて私はぐいぐい引っ張られて行った。