第21章 過ぎ去りし時 ー秀吉ー
その翌日。
私は、反物を仕入れるために城下町にでかけていた。
季節の変わり目で、新しく素敵な色や柄がたくさん並べられていて目移りしてしまう。
予算に限りがあるから、全部は買えないもんね……。
悩みに悩んだ末にいくつか選んで包んでもらった。
「今日も長居してすみません。
ありがとうございました。」
「こちらこそいつも贔屓にしてくれてありがとね。
あ、これすぐそこの店のお団子なんだけど、今朝娘がたくさん買ってきてさ、よかったら少し持って行って。
好きな人と食べると恋が叶うとか最近評判のみたらしだよ。」
いくらなんでもこんな量欲張りすぎで食べきれないと、店のご主人は笑いながら持たせてくれた。
秀吉さん甘いもの苦手だけど、みたらしなら一緒に食べてくれるかな……。
今晩また会いにいってみよう。
そう思いながら歩き出した帰り道。
道の向こうに見慣れた色の着物が見えた。
秀吉さんだ。
もしかして、迎えに来てくれたのかな?
弾んだ気持ちで足を速めようとした時、秀吉さんに女性が駆け寄って声をかけた。
誰だろう……。
私はなんとなく立ち止まった。
その女性は、遠目でも綺麗な人だとわかる。
でも、近い。
秀吉さんとの距離が近い。
しかも、話しかけながらシナを作って腕を触ったりやたらベタベタしてる……!
覗き見してるような罪悪感を覚えつつも、近づくのもためらわれて私はそこから動けない。
二人はとても親しげで、過去の関係を連想させた。