第20章 勘違い ー光秀sideー
翌朝、仕事を片付けながらも文を読んだだろうか、薬は飲んだだろうかとずっと落ち着かない気持ちで一日を過ごすことになった。
俺らしくもない。
でも、それも意外と悪くないと感じていることのほうが驚きだ。
そして夕刻。
「紗代いるか?入るぞ。」
襖を開けると、驚いた顔の紗代が俺を見上げていた。
まぁ、そうなるだろうな。
「逃げずにちゃんと待っていたんだな。
偉い偉い。」
「あれ……?秀吉さんは?」
「おまえは秀吉のことが好きなのか?」
「えっ、ちがっ……います、けど。」
「何か言いたそうな顔だな。」
「だって、えっと……。
私が秀吉さんのことが好きだって勘違いしてたのは、光秀さんじゃないですか。」
ここまでは予想通りの反応だ。
「俺はそんなことを言った覚えは一度もないが。」
そう言うと紗代はうろたえた。
「もう、光秀さん何考えてるか全然わかりません。
だいたい何しに来たんですか?」
怒ってないで、早く素直になれ。
しょうがない、もう一押ししてやるか。
「愛する者から、想いを告げられに来たつもりだったが勘違いだったか。」
「今、なんて?」
「聞こえていただろう。」
「気づいていたんですか?」
俺から仕掛けた駆け引きなのに、こっちが焦らされ始めてそろそろこの会話も終わりにさせたいところだ。
そんな心情は隠して薄く笑みを浮かべ、紗代の言葉をかわす。
「何をだ?」
俺が好きだと言え。
「私が光秀さんのことが好きだ、って。」
それでいい、その素直なところに惚れた。
「俺は、おまえのそういうところが好きなんだ。」
手を引いて、紗代を胸の中にとじこめた。