第20章 勘違い ー光秀sideー
「光秀、紗代の負けを貴様が引き受けるか?」
秀吉が紗代を連れて行った後、助け船を出した俺に信長様が言った。
「一つ命令だ。
紗代の機嫌を直してこい。」
見透かすような視線。
信長様にはお見通しか。
宴がお開きになり、帰る前に紗代の部屋へ寄る。
懐紙を取り出し、用件を書きつける。
家康にもらった薬を包み、折りたたんだ。
襖をスッと開け、枕元へ。
よく寝ている。
月明かりに照らされた寝顔を見ていると、目尻に涙の後が微かに見えた。
やりすぎたか……。
泣かせるつもりはなかったんだが。
加減を誤るとは、俺も自分で思うより入れ込んでしまっているのかもな。
自嘲気味にため息をついて文を置こうとしたが、やめた。
襖に挟んでおくことにするか。
泣いたことを知られたくはなかっただろう。
見なかったことにしておいてやる。