第19章 勘違い ー光秀ー
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫じゃない……。」
秀吉さんの袖を握ってなんとか歩いていたけれど、途中で酔いがまわってきてうずくまってしまった私は、結局秀吉さんに横抱きにされて部屋に向かっていた。
「うぅっ……。」
「は?!紗代、泣いてるのか?」
見られたくなくて、秀吉さんの着物の合わせに顔を押し付けた。
涙が止められなくて返事もできない。
それでも秀吉さんは何も聞かずに、部屋まで連れて行ってくれた。
こんな風に拗ねて、酔っ払って、泣いて、秀吉さんに甘えて、子どもっぽい自分が嫌になる。
こんなことしても何も変わらないのに。
「着いたぞ。
布団しいてやるから、ちょっと待ってろ。」
「んんー。」
眠たい……。
「おいこら、まだ寝るな。」
私は睡魔に勝てず、壁に寄りかかったまま眠ってしまった。
「しょうがないな、よいせっと。」
布団を敷く前に寝てしまった紗代を抱えて寝かせてやる。
まつ毛を濡らしたままの寝顔を見ながら秀吉は独りごちた。
「まったく何があったんだか。」
すると、それに答えるかのように
「光秀さんのバカ……。」
紗代が呟いた。
腰を浮かしかけていた秀吉は得心の行った顔でもう一度枕元に座る。
「……明日からまた"いいお兄ちゃん"してやるから、今だけ許せ。」
そう言うと紗代の額にそっと口づけた。