第19章 勘違い ー光秀ー
私は手に持った盃を見ながら悶々としていた。
今日は久しぶりに宴が開かれていて、目の前には政宗の作った美味しいお料理とお酒が並ぶ。
向こう側に座る光秀さんは、家康さんと三成くんのやりとりに突っ込みをいれてるみたい。
お酒に口をつけながら最近の出来事を思い出す。
反物の買い出しを秀吉さんが手伝ってくれたとき。
秀吉さんの御殿へお届けものをしたら、引き止められてお茶をいただいてたとき。
なんでそういう時に決まって光秀さんが現れるんだろう。
これじゃあ誤解をとくどころじゃない。
この状況で自分から気持ちを伝えるなんて出来ないし、気づいてもらえるとも思えないし……。
「なんだ紗代、今日はよく飲むな。」
いつもよりハイペースで飲んでたら政宗が空いた盃にお酌をしてくれた。
飲んで気を紛らわせたい気分なんだもん。
「政宗には付き合ってもらえないからつまんなーい。」
「紗代、そんなに飲みたいなら俺と勝負するか?」
私と政宗のやりとりを聞いていたらしい信長様から声がかかる。
「私けっこう強いんですよ?」
「望むところだ。」
楽しそうに笑う信長様の側へ行こうと立ち上がると、秀吉さんに止められた。
「おい、やめとけ。
信長様と酒で勝負なんて、無鉄砲にもほどがある。」
「秀吉さんのせいなんですからね!」
もうただの八つ当たりだ。
ごめん秀吉さん。
「お前らなんかあったのか?」
「いや、全く心あたりがない。」
政宗と秀吉さんの声が後ろでするけれど、聞こえないフリをして信長様のところへ行った。