第16章 月夜の待ち合わせー政宗ー
翌日、政宗の御殿から安土城へ向かうことになった。
もらった簪を刺して、私は上機嫌だ。
「これ、おまえが返しとけよ。」
渡されたのは秀吉さんの手ぬぐい。
「洗っておいてくれたんだ、ありがとう。」
それはいいんだけど、これ渡しながら昨日のこと思い出しちゃいそうだな……。
廊下を歩いていると、早速秀吉さんに行きあった。
「おまえが時間より早く到着するなんて、珍しいこともあるもんだな。」
「まぁな。」
政宗は足を止めずに先へ進む。
「秀吉さん、これ、ありがとうございました。」
別にただの手ぬぐいだよ。
ただの手ぬぐいだけど、やっぱり昨日のことを思い出して顔が熱くなる。
「もう廊下は走るなよ。」
そう言って秀吉さんは私の頭をポンポンしようと手を伸ばした。
が、その手は途中で止まり何かに納得したように「あー、そういうことか。」と言うと先に歩き出した。
どうしたんだろう。
私もその後に続いて軍議に向かった。