第16章 月夜の待ち合わせー政宗ー
貸してもらった着物を、やっときちんと身につける。
「別に、秀吉さんにはすれ違った時に手ぬぐい貸してもらっただけなのに。」
その手ぬぐいを使ってこんなことされるなんて……。
「貸してもらっただけ?
どーせ秀吉のことだ、こうやって汗を拭われたんじゃないのか?」
私の首筋から胸元へ手ぬぐいを動かした。
「そっ、そんないやらしい感じじゃないよ!!」
「でも拭ってきたんだろ、やっぱりな。
俺のもんに気安く触るなっつーの。」
あ、今のちょっとときめいた。
まだ秘密の関係だけど、こうやって独占欲発揮してもらえるのは単純に嬉しい。
政宗は立ち上がると、障子を開け放った。
「ほら、綺麗だぞ。」
振り返った政宗の向こうに満月が浮かんでいる。
「ほんとだ。」
私は政宗の横に並び立った。
しばらく寄り添って月を見ていると、目の前に小箱が差し出された。
「これ、私に?」
「あけてみろ。」
受け取った小箱を開けると、中には三日月をあしらった簪が入っていた。
「綺麗……!ねね、差して!」
髪を簡単にまとめたところに、簪を刺してもらう。
「どう?」
「似合ってる。
明日、これつけて軍議来いよ。」
「うん、ありがとう。」