第6章 *過去の傷
気づくと男達は居なかった。
居たのは腕を怪我したセン様だけで、私は慌てて駆け寄る。
『セン様っ!』
「ヴィア……男は片付けた。 大丈夫か?」
『私は大丈夫ですけど、その腕誰がっ…』
「お前…自分がやったのを覚えてないのか?」
『え…』
その瞬間、時が止まったような気がした。
私が、主人であるセン様を怪我させてしまったのだ。
近くで見ると傷が深く、血が大量に出ている。
頭が混乱しながらも、何とか屋敷に帰りセン様は手当を受けることになった。
『私が……セン様を、あんな目に』
私は居てもたってもいられず、手当が終わったと聞きセン様の部屋へと行った。
セン様は椅子に座り本を読んでいて他に人は居なかった。
「ヴィア、どうしたんだ?」
『セン様…………っ、申し訳ありませんでした!』
私は床に頭を付け謝罪をする。
床に穴が開くほど謝って謝って、謝って…悲しい気持ちしかなかった。
『主人を傷つけてしまうなんて、使用人として最悪の失態です! 煮るなり焼くなり、なんでも受け入れますっ! 本当に申し訳ありませんでしたっ…』
「ヴィア!顔を上げろ、あれはヴィアのせいじゃない。奴らが絡んできたのが悪いんだ」
『ですが、セン様に怪我を負わせ更に膨大な力を使わせてしまいました』
「力はしばらくしたら回復するさ。少しの間はキツいだろうけどな」
その時、私は思い出した。
前にセン様と体を重ねた時、あれで力をもらえるとか聞いた気がする。
せめてもの力にならなければと、私はセン様をベッドに押し倒した。