第6章 *過去の傷
しばらく余韻に浸らせた後、彼女の上着とワイシャツを捲り証を出しセンは呟く。
「retrovo(回収)」
ヴィアの周りを漂っていた光が一まとめになり、センの体へと入り体が楽になるのが分かった。
力が回復した証拠だ。
それとは対照的に、ヴィアから全身の力が抜けたのが伝わってきた。
心配で様子を見てみたが眠ってしまったようで、寝息を立てていた。
まだ入れていた自身を抜き、服を整える。
「ヴィアの怪我の手当てと、部屋にもはこばなければな…」
そんな事を呟きながらもう一度彼女を見る。
汗などをタオルで拭いてやり寝ているヴィアに言う。
「ありがとうな…ヴィア」
聞こえてはいないだろうが、伝えたくなったのだ。
必死になってくれた彼女に感謝するセンだった。
─────────────────────────
それからの事….…力を出し過ぎたヴィアは回復させているためか、何日も寝たままだった。
少しも目を覚まさずに一週間が経ち、ようやく目を覚ましたのだが…もう二度とあんな事になるのは彼女にとっては負担でしかないと考え、同じような事があっても隠そうと決めていたのだ。
そして、今に至る。
「確かに…そんな事を言った時もあったな」
『はい、あの時セン様は私に大切な事を教えてくれました。 私は同じ事を繰り返さないように注意しながら過ごして来ました…ですが、また同じように私は…』
俺は悲しそうにうつむくヴィアに近づき、頭を撫でる。
「大丈夫だから、悲しそうにするな」
『ですが、私は自分の主人を二度も傷つけてしまいました…』
「良いよ、それで。 それを踏み台にして成長すればいいさ」
『ですが…』
「それとも、俺が簡単にやられるように見えるか?」
冗談半分で問うてみると、彼女は慌てて弁解をしてきて笑ってしまった。
冗談を見破れないのは何とかしないとな。
『もぅ、意地悪なんですから…』
「その意地悪で喜んでるのがヴィアだろ?」
『っ、喜んでま………いや、その』
「ん?」
『あっと……し、失礼しますっ!』
返答に困ったのか慌てて部屋を出て行ったヴィア。
「可愛かったな(笑)」と思いながら再び椅子に腰掛け、本を読み始めたセンだった。