第6章 *過去の傷
その後私は、クレス君を部屋へ送りセン様が帰ってくるのを待っていた。
さっきの事を聞くためだ。
何を私に隠しているのか…どうして怪我をしていたのか、気になって仕方がなかった。
しばらくして、セン様が帰ってきたのは夕方だった。
私は急いでセン様の部屋へと行き、ドアをノックする。
『セン様っ、ヴィアです!』
「……どうぞ」
そのどこか冷たい声を聞き部屋へ入る。
『失礼します…セン様、お話したいことが』
「さっきの事か?」
『はい…やはり気になってしまいまして』
ドアの側で私は会話をする。
セン様は椅子に座ったままため息をついた。
「はぁ……気にするなと言っただろ。ヴィアは関係ない」
「関係ない」その言葉を聞き、私は思わず大声を出していた。
『関係ないこと無いです! 私はセン様に使える者、セン様の痛みは私の痛みでもあるんです』
「っ……」
ヴィアに思わず言ってしまいそうになるほどの勢いだったが、それでも口を閉ざす。
どうして頑なに言わないのか…それは、昔ヴィアが来たばかりの頃に起こった出来事がキッカケだった。
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「ヴィア少し待っていてくれ。すぐ済ませてくる」
『はい、分かりました』
私はセン様に言いつけられた通り、その場所で待つ。
街には人が沢山いて酔ってしまいそうになる。
街行く人々を眺めながらセン様を待っていると、数人の男性に声をかけられ振り向く。
『……なんでしょうか?』
「姉ぇちゃん1人? こんな所で突っ立ってないで、俺達と遊ぼうよ」
『いえ、人を待っていますので…』
「良いじゃん別にー、ちょっと遊んで来たって怒りゃしねぇよー」
「ほらほら、行こうよ(笑)」
『なっ、止めて下さい…』
突然腕を掴まれ引っ張られる。
体格の良い男なため、女である私は抵抗が出来ず街の外まで連れ出されてしまった。
それでも私は諦めずに抵抗をする。
『やめてっ、離して下さいっ!』
「へへっ、可愛いじゃん。敬語を使う子ってなかなかくるよなぁ」
『や、だぁ…』
顔を上げ男達を見上げた時、私の中でその光景が昔の光景と重なった。
プツンッと何かが切れた。