第2章 *所有物
『もうすぐしますと昨日お話されてました、プラゴール様がお見えになります』
右手で上着のポケットに入れている懐中時計に触れ、時間を確認する。
プラゴール様はセン様の取り引き先の方らしいが、何の取り引きをしているのかは教えてもらえなかった。
私が立っている前で、机に向かって書類等を整理しているであろうセン様は、ただ一言「そうだな…」と呟き何もしゃべらなかった。
静けさだけが残る。
目の前でセン様は今何をしているのか。
自分はある理由があって目を布で巻いているため、何も見えないのだ。
(見えないって……やっぱり不便。 でも、自分は見える方がとても不便なんだよね)
リンゴーン♪
自分が考え事をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
プラゴール様が来たのだろう。
セン「ヴィアは少し待っていろ。 すぐ迎えに来る」
『分かりました』
パタンと部屋の扉が締まる音が聞こえ、しばらく私は部屋でじっとその場で待っていた。
数分後、再び扉の開く音がしてそっと腕を引かれた。
セン「お待たせ。 彼が居る部屋に行くから、着いてきて」
『プラゴール様ですね。 承知しました』
セン様の半歩後ろを歩き廊下を歩いて行く。
屋敷が広いからか、セン様の部屋からプラゴール様をお待たせしている部屋までだいぶ歩いた様に感じた。
セン「お待たせしました」
『失礼します』
一礼して部屋の中に入り、扉の横に立つ。
プラゴール「可愛い娘だね。 新入りかい?」
セン「えぇ、まぁ……新入りと言うか買ってきたんです(笑) ヴィア、挨拶を」
『はい。 初めましてプラゴール様。 私、ヴィアと申します』
だいたいの声の位置からその方を向き頭を下げる。
プラゴール「なかなか健気でいい子じゃないか(笑)」
セン「えぇ、とても」
それから2人は仕事の話に入って言ったようで、ただ私は黙って扉の横で聞いていた。
だが、途中でセン様に電話が来たようで、他のメイドが呼びにやって来た。
セン「少し失礼します。 すぐに戻りますので」
プラゴール「あぁ、分かったよ」
セン様に待っているよう言われた私は、プラゴール様と2人きりになってしまった。