第6章 *過去の傷
『クレス君、さっき街に来た時私が言った言葉に首をかしげてたよね?』
「……?」コクコク
『あの意味はね……この街では、″裏で人間の売買がされている″から、見た目はとても綺麗な街でも少し違う場所から見ると、とても汚くて暗い…最悪な街だって事なの』
街を出る時、そんな話をするとクレス君とても悲しそうな表情で私を見てきた。
子供の彼からすると残酷なのだろう…だが、この世界では当たり前のようになっている。
私のいた街も、見てきた街でも、沢山見てきた。
特に術師は高値でやり取りされるため、狙われやすく常日頃から警戒しておかなければならない。
店が一般とは別にあるのもその為だ。
「……!!」
『ん? どうした、の……』
クイッと服を引っ張られて振り向いた先には、男2人と幼い女の子の歩いていく姿。
薄暗い狭い路地に入っていくのを見て、私はすぐに奴隷商人だと思った。
なぜなら、わざわざ薄暗い路地に入って行く所、幼い女の子に男が2人もついている、決定的だったのは女の子の身なりだ。
ボロく汚れた服に裸足で、首に鉄の首輪があった。
鉄の首輪、それは奴隷の証でありそれと共に体のどこかに焼印が押される。
私にもある…あの経験が…
『クレス君、早く帰ろ?』
思い出したくもない、私は少し早歩きでクレス君の手を引き屋敷に戻った。
嫌な思い出は…心の底に沈めておこう。