第8章 Shall we?〜岩泉一〜
文化祭当日。
クラス劇をして、揃いのTシャツを着て、
店番やってる後輩たちを冷やかして、
軽音部や書道部のパフォーマンスを見て
学校を問わず女に囲まれる及川を殴って
甘いものばかり買いたがる花巻をいなして
他校の女子生徒をナンパする松川を止めて
とうとう後夜祭。
1年生が頑張って作った展示に火をつけて。
『それではフォークダンスを踊ってください』
放送部のアナウンスで音楽が流れ出す。
今年は[Alexandros]のAoyamaらしい。
放送部の部長がファンなんだとかなんだとか。
「岩ちゃんなんで行かないの!」
「行ってこいよ」
「今行かねえとお前絶対後悔するぞ」
「早く行かないと小鳥遊さん美人だから他の
男にとられますよ」
「てか俺らがとりますよ」
「岩泉さん!」
カラフルなTシャツを着た背の高い男バレは
なかなか目立つ。
そんな集団に名前を叫ばれて何もしない奴は
人間じゃない。
ここから動かないと普通に恥ずかしい。
「行ってこいよ」
松川が俺のポケットに何かを入れた。
「ん?」
「ちゃんと着けろよ」
したり顔の松川。
「なんすかそれ」
国見に耳打ちされた金田一が顔を
真っ赤にして口元を手で覆う。
「今しかねえよ、岩泉」
「あんずちゃんは女バスと一緒に
いるってユミちゃんが言ってる」
「誰だよユミちゃんって」
「女バスのマネさん」
「タラシもたまには役に立つな」
「ひどいっ!」
「いいんですか、それで」
「え?」
「言わないまま卒業なんて、悲しいでしょう」
もしこのまま小鳥遊への想いを伝えないまま
卒業するとしたら。
あの綺麗な髪をもう二度と見ることはない
あの可愛い笑顔に癒されることももうない
あの甘い香りに胸をときめかせることも
あの細い脚に欲情することもきっともうない
「いいんですか?!」