第2章 happy jewel
突然こちらに向かって駆け出す唯。
ダンっと床を蹴って跳躍し、そのままジン達に足から突っ込んでいく。
「唯ちゃん!?」
キールが目を白黒させて羽ばたき逃げる。
「っと」
ジンも寸前で唯の攻撃を避けた。
綺麗に着地した唯はすぐに体勢を立て直し、更にジンに攻撃を仕掛ける。
だが、次々繰り出される唯の足技を、ジンは確実にかわしていった。
「ジ、ジン! 唯ちゃんに怪我させんなよ!」
「当たり前っと、唯、本気出せば、結構、強いのなっ」
喋りながら唯の攻撃をひょいひょいかわすジンは、なぜかすごく楽しそうだった。
「……でも、そろそろ、正気に戻ってもらおうか、なっ!」
と、横腹目掛けて迫っていた唯の足をジンはガッと片手で掴む。
「くっ!」
唯は悔しそうに声を上げると、そのまま逆の足を軸にしてどうにかバランスを取り拳をジンの顔面に突き出す。
だが、その腕もジンは片手で軽く押さえ込む。
そのまま掴んだ腕をぐっと引き寄せると、今度こそバランスを失った唯はジンの方に倒れこんできた。
「唯」
ジンは耳元で囁いて、唯を強く抱きしめる。
「!」
それでもやはりそこから抜け出そうと暴れる唯に、
「お姫様。そろそろお目覚めの時間ですよ」
ジンはそう呟いて、唯の唇を自分のそれで塞いだ。
「!?」
目を見開き全身を強張らせる唯。
「んぅっ」
息が出来ないくらいの長く深いキスに、唯の身体から徐々に力が抜けていく。
キールはそっぽを向いて気まずそうに頭を掻き、婦人は先ほどからずっとひとり石の入ったケースを愛おしそうに撫でている。
……何秒ほどそうしていただろうか。
目を瞑り完全にジンに身体を預けていた唯が、ぱっと目を開けた。