第2章 happy jewel
唯の考え通り、ジン達は早々にその扉を発見した。
ちなみに部屋の外には男たちが折り重なって倒れている。
「けっ! オレ達をナメんなってーの」
「きっとこの中に主人もいるだろ」
「さっさと頂いちまって、早く唯ちゃんトコに戻ってあげようぜ!」
「あぁ」
と、ジンは肩に留まっているキールを横目で見る。
「……キール、さっきオレが言ったこと、忘れるなよ」
「あ? あぁ、その石を見なければいいんだな」
ジンは満足そうに頷くと、扉を開けて階段を下り始めた。
点々と壁に付けられた蝋燭の炎が頼りなく足元を照らしている。
「ジン、女の声が聞こえるぞ」
「……あぁ」
「……これは……の。誰にも……ないわ……」
「女主人か?」
「あぁ。でも、どうやらもう一人いるみたいだ」
「護衛か」
「さぁ……と、そろそろ終着地点だ、キール」
そして階段が終わる。
そこはある程度広い部屋になっていた。
ただ隠し部屋なだけあって窓は一つも無く、中央にポツンと台座が置かれているだけの、殺風景な部屋だった。
「王ドロボウ!?」
途端、きんきんした大声が飛んできた。
台座の前に立ちふさがる物凄い形相の女主人。
だがふたりの目は、それよりも、もっと手前に居る少女の後姿に釘付けになっていた。
「唯ちゃん!?」
キールが素っ頓狂な声を上げる。
こちらをゆっくりと振り向いた少女は間違いなく唯で、ジンはスっと目を細めた。
「……」
しかし唯は二人を見ても何も反応しない。
感情の無い虚ろな瞳でただ侵入者である二人をじっと見つめている。
キールも表情を厳しくする。
「ジン……唯ちゃん、まさか」
「あぁ、アレを見ちまったんだ。……お前は見るなよ。台座の上だ」
「お、おうっ」
台座の上の透明なケースの中に、水晶玉に似た大きな石が置かれている。
ジンがそれを確認すると、石を庇うようにして両手を広げ婦人が喚いた。
「わ、渡さないわ! これは、私のものよ!!」
と、その金切り声に唯がビクンと反応する。
「唯ちゃん?」
直後、唯の目つきが変わった。
――その目は、敵意むき出しのもの。
「……これは、私のお宝……!!」