第2章 happy jewel
「ん? ……っ!!? ん、んンーーー!?」
その顔がみるみる真っ赤になっていく。
それを薄目を開けて確認したジンは、名残惜しそうに唯から唇を離し、ニっと笑った。
「……目、覚めた?」
「な、ななななっなんで、ジ、ジン!?」
自分の唇を手で塞ぎながら完全にパニック状態の唯。
「な、なんでここに……!?」
(それに、なんで、ジンとキ、キスしてたのーー!?)
まだ唇に感触が残っている。
「良かった! 正気に戻ったんだね、唯ちゃん!!」
嬉しそうにキールが唯の肩に留まる。
「え? 正気?」
そんな唯にジンはやはり楽しそうに言う。
「今、唯はあの石の魔力に魅入られていたんだ。治すには王子様のキスが一番効くだろ」
「そっ……石の、魔力?」
ジンの言葉にまたも沸騰しかけた唯だったが、そこでやっと我に返る。
「そう。だからもうあの石を見るなよ」
言われてみると、確かにこの部屋に入り石を見つけてからの記憶がない。
「じゃぁ、あの女主人も?」
唯は石を見ないように女主人の方を振り返る。
「私のものよ。誰にも、渡さないわ……」
愛おし気にケースを撫でながらぶつぶつと呟いている女主人。
それを見て、唯はぞっとする。
「わ、私も、あんなだった?」
「いや、唯ちゃんはあんなじゃなかったよ!」
「そ。ただオレに飛び掛ってきただけ」
「え!?」
慌てた顔でジンを見る唯。
「ま、その辺の話は後。まずはあのお宝を頂いちまおう」
「でも、ジンは平気なの!?」
唯は心配になって訊く。
ジンがあんなふうになってしまうのは絶対に嫌だ。
だが、ジンは女主人の方に一歩出ながら、
「オレは王ドロボウだから」
そう言って不敵に笑った。