第2章 happy jewel
「女性が来たのは初めてよ。予想はしていたけれど、むさ苦しい男ばかりで気が滅入っていたところなの」
大きな窓から庭にいる男達を見下ろしながら溜息交じりに言う女主人は、皆が噂するよりも普通の婦人に見えた。
歳はおそらく30代後半。アクセサリー類は大量に着けていたが、一見優しそうな、すんなりとした美人だ。
唯は執事に案内され今女主人の部屋にいる。
この部屋には二人以外誰もいない。
部屋の外には二人の警備がついていた。
他にもここの部屋に着くまでの間何人もの物々しい雰囲気の男たちを見かけた。
キールが予告状を出してからまだ24時間経っていないのに良くこれだけの人が集まったものだ。
確かに報酬は良かったが……おそらく来た者を手当たり次第に採用しているのだろう。
女主人がゆっくりと唯の方を振り返る。
「丁度良かったわ。貴女、私の近くを護ってくれない?」
「あ、はい。……あの、それで、例の狙われているお宝はどこに?」
だがその質問をした途端、女主人の顔つきが変わった。
「それを聞いてどうするつもり!?」
いきなりすごい形相で睨み付けられた唯は焦りながらも答える。
「その場所を聞いておけば、護りやすくなりますので……」
「いいのよ! 貴女は私を護っていれば!! わかったわね!」
ぴしゃりと言い放たれてしまった。
(こっわーーー!)
唯は「わかりました」と答えつつ、内心『前言撤回―!』と叫んでいた。
「それで、その王ドロボウはなんと?」
「“貴女の幸せいただきます”と。あぁ忌々しいったらないわ……」
そう言いながら自分の親指の爪をギリリと噛む婦人。
「日時などは……」
「全く書いてなかったわ。だから貴女、私の警護を24時間ずっとお願い。そのかわり報酬は弾むわ」
「はい」
唯は恭しく頭を下げた。