第1章 出会い*ジン視点
――思ったとおりだ。
真剣に悩む顔も可愛いけど、笑顔は更にだった。
それはキールも一緒だったようで、嬉しそうに唯が出した手を握った。
そして、去り際。
「近いうちにまた会えるさ」
オレは初めて唯に声を掛けた。
――近いうちに。必ず。君を盗むから。
そう、心の中で付け足して。
すると唯はそれが伝わってしまったかのように、少し驚いた顔でオレを見上げた。
「キール。お前、金輪際、唯に触るなよ」
「はぁ? 何でだよ!」
案の定怒って文句を言ってくるキール。
でもな、オレだって怒ってるんだ。
誰だって、気に入ったものに先に手を出されたら怒るだろう。……ガキっぽいか?
オレだって驚いてるんだ。
人より独占欲強いとは思っていたけど、まさかここまでとは思ってなかった。
相棒にさえ、渡したくないと思うほど……。
納得いかないと耳の真横で怒鳴るその相棒に、オレはきっぱりと言う。
「彼女はオレのものだから」
「は?」
ぽかんと嘴を開けるキール。
「唯がジパングのお宝。オレは彼女を盗む。それでオレのものにする」
オレが一気に言うと、キールは訝しげな表情をする。
「なら、何でさっき会ったとき盗まなかったんだ?」
「予告状出しただろ。城の中で盗まなかったら反則になっちまうし、それにその方が面白いだろ」
ニッと笑うオレにキールが思い出したように怒り出した。
「つーか、唯ちゃんがお前のものになるわけないだろ!? それに、今のところは絶対オレの方が好感度高いね!」
「オレは必ず唯を手に入れる。まぁ、そうなったらキール、肩に乗るのだけは許してやるよ」
相棒の最早意味不明の怒鳴り声が、ジパングの空に木霊した。
それからオレたちは城で再び出逢うことになる。
唯はオレが王ドロボウだと知ってかなり驚いていたようだった。
そして、オレは予告通りお宝を手に入れた。
今まで手に入れてきたどんなものよりも価値がある。
大切にしたい。
他の誰にも渡したくない。
大事な、大事な、オレの宝物。
fin.